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汗の異常(発汗障害)について|論文掲載のお知らせ

欧州皮膚科学・性病学会(European Academy of Dermatology and Venereology)が発行する学術誌JEADV Clinical Practiceに、共著者として執筆に携わった「Segmental Sudomotor Innervation in Harlequin Syndrome: A Case Report」が掲載されました。
(Harlequin症候群は、片側の顔面紅潮や多汗、反対側の無汗を呈する稀な疾患です。本症例のように腫瘍が原因のこともあれば、明らかな原因がみつからないこともあります。)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jvc2.70382

本症例では、右顔面の紅潮とともに、左顔面、胸部、上肢の無汗症がみられた。特徴的な症状を呈していたため、Harlequin症候群を疑い、全身の精査を行ったところ、MRIにて左第2-第3胸椎近傍に43mm大の腫瘤が指摘され、症候性Harlequin症候群と診断した。

発汗障害について

汗に関する病気やお悩みは、皮膚科が専門的に診療を行う疾患の一つです。汗は体温を一定に保つために欠かせない生理機能であり、暑い環境や運動時には体温の上昇を防ぐ重要な役割を担っています。一方で、「汗が多い」「汗が出ない」「体の片側だけ汗をかく」といった症状は、発汗障害と呼ばれる病気が原因となっている場合があります。

発汗障害は日常生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、ときに全身の病気が隠れていることもあるため、症状に応じた適切な診断が重要です。

発汗障害には、大きく分けて「汗が多すぎる状態(多汗症)」と「汗が少ない、あるいは全く出ない状態(低汗症・無汗症)」があります。多汗症の代表例としては、腋に過剰な汗をかく腋窩多汗症や、手のひらに症状がみられる手掌多汗症が代表的で、「腋汗が気になる」「手汗で紙やスマートフォンが濡れてしまう」といった症状で受診される方も少なくありません。近年は保険適用となる外用薬や内服薬の治療選択肢が大きく広がり、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。

一方、低汗症・無汗症では、暑い環境で体温調節が十分にできず、熱中症のリスクが高まることがあります。熱中症を繰り返すことや、「よく見ると体の一部だけ汗をかいていない」といった症状をきっかけに見つかることがあります。原因としては、神経疾患や自己免疫疾患、糖尿病などの内科的疾患、薬剤の影響などが知られていますが、原因が明らかでない場合もあります。

また、汗の異常は汗の量だけではありません。顔や体の左右で汗の出方が異なる、発汗する部位が限局している、顔面の紅潮を伴うなど、発汗の「分布」に異常がみられることもあります。このような症状の背景には、自律神経の障害や、今回私たちが報告した症例のように胸部や頸部の腫瘍などが隠れている場合があり、必要に応じてMRIなどの画像検査を含めた全身精査が重要になります。

さらに、汗はさまざまな皮膚疾患とも深く関係しています。汗による刺激で悪化するアトピー性皮膚炎や、高温多湿の環境で生じる汗疹(あせも)は夏に増悪しやすい代表的な皮膚疾患です。また、足の裏の汗が多い方では、細菌(Corynebacterium属菌など)が増殖することで足底の角質に小さなくぼみを生じ、強い足の臭いを伴う点状角質融解症を発症することがあります。適切なスキンケアや制汗治療、必要に応じた外用抗菌薬によって改善が期待できます。

汗の異常は「体質だから」「一時的なものかもしれない」と見過ごされがちですが、適切な診断によって原因が明らかになり、治療できるケースも少なくありません。当院では、皮膚科専門医が多汗症や低汗症・無汗症をはじめとするさまざまな発汗障害の診療を行っています。症状や経過に応じて必要な検査を行い、一人ひとりに適した治療をご提案いたします。汗に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

当院では、外来で対応可能なあらゆる皮膚疾患に対応しております。

ダーモスコピー(皮膚科医が用いる拡大鏡)、エコー(超音波診断装置)、採血、皮膚生検(病変部を一部切除し、顕微鏡検査で病理を確認する。確定診断に最も有用)等の検査を用いた正確な診断、内服(飲み薬)、外用(塗り薬)だけでなく、手術、レーザー治療、光線療法、分子標的薬、様々な処置(局所注射や穿刺、縫合、液体窒素、削り、巻き爪矯正 等)を組み合わせた、最善の治療の提供に努めております。

皮膚に生じたお悩み事がありましたら、お気軽にご相談ください。

早川道太郎 (皮膚科専門医 がん治療認定医)