2026年6月11日-14日に京都で開催された、第125回 日本皮膚科学会総会にて、アトピー性皮膚炎に尋常性白斑を併発した症例に、JAK阻害薬の内服投与を行い、アトピー性皮膚炎の改善だけでなく尋常性白斑の色調改善も得られたことを報告いたしました。
尋常性白斑の一般的な治療について
尋常性白斑は、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)が免疫学的な機序によって障害されることで生じる後天性の脱色素性疾患です。皮膚の一部の色素産生が失われることで、白い斑としてみられます。
現在、尋常性白斑の治療は外用療法と光線療法を中心に行われています。当院には光線療法の設備がありますので、併用療法を実施可能です。
外用療法では、ステロイドやタクロリムス、活性型ビタミンD3などが用いられます。これらの薬剤は、色素細胞に対する免疫反応を抑制し、色素の回復を促すことを目的として使用します。
光線療法は尋常性白斑に対して広く行われている治療法で、有効な波長の紫外線を病変部に照射することで色素の再生を促し、外用療法と併用することで治療効果のさらなる向上が報告されています。
病変の部位や罹患期間によっても反応性は異なりますが、治療効果は数か月単位で評価する必要があります。
近年は病態の理解が進み、新たな治療法の開発もすすんでいます。現在のスタンダード治療である、外用療法や光線療法に加え、免疫反応をより選択的に制御する治療薬にも注目が集まっています。
JAK阻害薬への期待
JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症などの治療に用いられている薬剤です。近年、尋常性白斑の病態にもJAK-STAT経路が関与していることが明らかとなり、JAK阻害薬と白斑との関連が注目されるようになっています。( JAK-STAT経路は、免疫細胞が互いに情報を伝達する際に利用する仕組みの一つです。近年の研究により、この経路がメラノサイト障害過程にも関与していることが分かってきました。)
日本では現在、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症などに対して複数の内服JAK阻害薬が承認されているほか、アトピー性皮膚炎に対する外用JAK阻害薬(デルゴシチニブ軟膏)も使用されています。
こうした背景のもと、JAK阻害薬を尋常性白斑の治療に用いる試みが国内外で進められています。
JAK阻害薬の外用剤であるルキソリチニブクリームは、海外で尋常性白斑に対する治療薬として承認されており、臨床試験では色素再生に対する有効性が示されています。欧米ではすでに実際の診療にも導入されていますが、2026年7月現在、日本ではまだ発売されていません。
内服JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症に対する治療薬として承認されていますが、尋常性白斑に対する適応は取得していません。しかし、上記疾患に対してJAK阻害薬を使用した患者において、併発していた白斑の改善がみられた症例が国外から報告されています。
本学会では、重度のアトピー性皮膚炎患者に対してJAK阻害薬を投与したところ、アトピー性皮膚炎による皮疹の改善とともに、長期罹患していた白斑の改善がみられたことを報告いたしました。単一症例から治療効果を結論づけることはできませんが、JAK阻害薬と白斑の関連を考えるうえで興味深い所見であると考えています。
昨年、参加したEADV(欧州皮膚科性病科学会)では、難治性皮膚疾患に対するJAK阻害薬の適応外使用についての議論もされており、国際的にも関心の高いテーマとなっています。
現時点で、尋常性白斑治療の中心は外用療法と光線療法です。
一方で、病態研究の進歩に伴い、新たな治療標的も明らかになりつつあり、JAK阻害薬についても、今後の適応拡大や新たな薬剤の上市が注目される分野の一つです。
当院では、外来で対応可能なあらゆる皮膚疾患に対応しております。
ダーモスコピー(皮膚科医が用いる拡大鏡)、エコー(超音波診断装置)、採血、皮膚生検(病変部を一部切除し、顕微鏡検査で病理を確認する。確定診断に最も有用)等の検査を用いた正確な診断、内服(飲み薬)、外用(塗り薬)だけでなく、手術、レーザー治療、光線療法、分子標的薬、様々な処置(局所注射や穿刺、縫合、液体窒素、削り、巻き爪矯正 等)を組み合わせた、最善の治療の提供に努めております。
皮膚に生じたお悩み事がありましたら、お気軽にご相談ください。
早川道太郎 (皮膚科専門医 がん治療認定医)


