1970年代〜1980年代、突如として増えた感のあるアトピー性皮膚炎。
現在、30代〜40代になる方は、幼児期より周囲にこの疾患に罹ったお友達が、少なからずいたはずです。
つらい痒みと湿疹は、勉学の妨げになったり、大好きな運動ができないなど、精神的なストレスにもなっていると思います。
そこで、今回の皮膚科医通信では、アトピー性皮膚炎の原因、悪化させるもの、治療法などについて、現時点でのまとめをご紹介いたします。
アトピー性皮膚炎の原因は実はまだ特定されていない。
社会問題化され、研究も進んでいるアトピー性皮膚炎ですが、
これまで、皮膚科医からの観点では、皮膚内部で免疫機構の問題もありますが、主として、皮膚の表面が障害され、その結果、皮膚バリア(皮膚の障壁)が生じるのではないかと考えられ、皮膚の表面を保護する治療が主に行われていました。一方で、小児科からは食事性によるものではないか?といわれ、食事療法が主として行われているようです。
この聞き慣れないバリアという言葉ですが、バリア機能=つまり皮膚が、外から内への刺激(紫外線、細菌等)、内から外(水分の蒸散)をコントロールしている機能のことで、これが障害を起こすことが、バリア障害と言います。
そして、この皮膚のバリア機能で主役を担っているのが、フィラグリンです。
皮膚のバリア機能の一部である天然保湿因子を作るフィラグリン遺伝子の変異異常が発見されたこと、
また、フィラグリン遺伝子異常がある人はアトピー性皮膚炎患者に多くいることもあり、
ついに、アトピー性皮膚炎は、このフィラグリンの変異が原因という説が有力になりました。
しかし、その後の研究で、フィラグリン説のみでは説明がつかないことも出てきて、
再び、アトピー性皮膚炎の原因の特定は先送りとなっています。
さらに、アレルギーの人が、喘息、アトピー、アレルギ-性鼻炎などを順次生じるアレルギーマーチというものがあります。これについても、まだはっきりとした解明はできていないのも事実です。
原因は不明。でもアトピー性皮膚炎を悪化させるものは、明確。
このように、何らかの原因でバリア機能が傷害して発症するアトピー性皮膚炎ですが、経皮的(肌を通して)には、ダニ、発汗、カビ、細菌などが症状を悪化させることは明確になっています。ということは、対策も立てられるということ。後述の通り、適切に対処することで、症状を緩和させ、治療を早めることも可能になってきます。
ちなみに、経皮的なものでは、世間を騒がせた、茶のしずく石鹸問題が有名です。この石鹸に含まれていた小麦成分が、肌を通して体内に入り、小麦アレルギーを発症しました。これが、経皮吸収によるアレルギー発症の強い根拠になりました。
経口的なものについても、アレルギーを起こす(食事性アレルギー)ことは以前よりよくあり、アレルギーを生じたものを避ける傾向がありましたが、最近の研究では、少量ずつ摂取することで、アレルギーが生じなくなると言われはじめています。
たとえば、ピーナッツアレルギーの人に、徹底して食べさせないことよりも、少しずつ摂ることで、ピーナッツを食べられるようになったという研究が発表されているように、食事性アレルギーは世の中で考えられているほど多くなく、食事制限も以前ほど気を付けなくてよいのではないかという考えです。
(ピーナッツアレルギーについては、もしかすると、口の周りについたピーナッツバターがアレルギーの原因ではないかと推論する学者もいます。)
アトピー性皮膚炎の治療 まとめ
当院では、皮膚科的な軟膏治療を、実践的に指導していて、一定の効果を挙げてます。
非ステロイドのプロトピック軟膏やステロイド外用治療を主に使っていますが、漢方治療もおこなっていますので、気軽にご相談ください。
また、アトピーの病勢を示すマーカーを採血して、状況把握に努めております。
その他、如何にダニやカビ、細菌など寄せ付けないか、シャンプや石鹸の上手な使い方を含めた入浴方法など、
悪化させない運動や食事の習慣、居住環境に関するアドバイスも行っています。
下記にご紹介するのは、子どもと大人のアトピー性皮膚炎のケアに関する簡単なアドバイスです。診察においては、個人個人に合わせた診療、処方、アドバイスを行っておりますが、是非、参考にしていただければと思います。
小児のアトピー性皮膚炎のケアは「保湿」から
皮膚の保湿を十分にすることで、外的からの進入を防ぎ、アトピーを始めとするアレルギー疾患を未然に防げるのではないかと考えられています。入浴後や外出前の保湿をこまめに行い、過度な乾燥を防ぐようにしてあげてください。
当院では小児のアトピー治療の目的は皮膚炎を長引かせず、素早く治療し、出来るだけ保湿をまめにして、長期的にみても、バリア傷害を生じないように努めてもらっています。
大人のアトピ-性皮膚炎は、ケアを施し、社会生活を快適に過ごすことを念頭に
大人のアトピー性皮膚炎は、こども時代にバリア障害から経皮的に異物が体内に入り、免疫的異常を生じてしまった、と現段階とは考えられています。よって、大人の出来上がったアトピー性皮膚炎は難治であるが、コントロールは十分可能だと考えています。
コントロールができれば、痒いつらい症状を少しでも和らげ、赤黒い皮膚も改善傾向を示し、社会生活を気持ちよく過ごすことができると思います。
そのためには、外用や内服の治療だけでなく、原因物質回避、からだを清潔に保ち、よい生活習慣をつけることです。
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皮フ科早川クリニックは、東京・日本橋の皮膚科専門医です。
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