皮膚科医通信Vol.008  秋冬に多い診療項目「やけど」を考える

11月、皮フ科早川クリニックも、夏の忙しさが一段落して、少しだけゆとりある診療体制になっています。
大勢の患者様がお見えになる夏は、どうしても病気のお話中心になってしまいますが、
様々な症状が落ち着く秋以降は、ちょっとした余談の中などから、
治療や予防のヒントが得られたり、患者様の生活習慣をより理解できたりします。

さて、人形町、水天宮界隈の木々も秋の深まりと共に色づいてきました。
当クリニックから、北へ少し行った宝田恵比寿神社さんでは、毎年10月の後半に、「べったら市」というのが開かれます。大根の麹漬「べったら漬け」を中心に、多くの露天で大変なにぎわいです。

べったら漬けにも使われる大根は、秋冬の鍋料理に欠かせぬ具材。寒くなるほど、あの温かさが、嬉しくなるものです。
そして、

お鍋を召し上がる季節になると、増えてくるのが、「やけど(熱傷)」。現に、当クリニックでも、1週間位前から、やけどによる受診が毎日のようになってきました。

「お鍋や蒸し器の蒸気を浴びてしまった。」「電気ポットやお玉に引っかかって、お湯をかけてしまった。」などが、主な原因のようです。

蒸し器の湯気は要注意

久しぶりに出したポットや大きなお鍋によって、今までと少し動線が変わると、慣れた台所でも、ひっくり返したり、ぶつかったりで、思わぬ熱傷に繋がっているのかな?と、私なりに考えたりしています。

以前、知り合いの中国料理店の厨房を覗いた時に、お玉や木べらの柄を、正面ではなく、横方向に向けて、事故を防ぐようにしていたり、熱いものを持って移動するときは「熱いの持ってます!」とスタッフが声を出しているのを観ましたが、ご家庭でも、そういった習慣は必要かもしれません。特に小さなお子様がいるご家庭では、未然にやけどを防ぐよい方法だと思います。

皮膚科医が教えるやけど予防

さらに、これからは、暖房器具なども増えますから、注意が必要かもしれません。その他に、電気あんかや湯たんぽなどによる低温やけどもありますが、これについては、また別の機会に触れる予定です。

という訳で、今回は、やけど(熱傷)をしてしまった時の心得などを、今一度、おさらいしておきます。

熱傷(やけど)の時の応急処置

やけどの症状

症例:左手第2度熱傷/給湯器よりの熱湯で火傷、受傷1時間後の様子

やけど(熱傷)をしてしまった時は、熱の影響を取り除くために、まずは十分に冷やすことが大切です。
水道の流水をかけることが一番よいのですが、もし、氷で冷やす場合は、冷やしすぎによる凍傷を防ぐために、氷をビニール袋に入れ、タオルで包むなどして下さい。

時計や指輪なども、腕や手のやけど(熱傷)の場合、時間の経過と共に腫れて、外れなくなることもありますので、早めに外しておきましょう。

早めの受診で早い回復

やけど(熱傷)は、受傷当初より、時間の経過と共に痛みや腫れなどの症状が徐々に出現するのが特徴です。
一見、通常の皮膚とかわりなく見えたり、痛みがなかったりすると、気軽に思ってしまいますが、実際は神経まで焼けて痛みを感じないことがあったりします。
「大したことないから、大丈夫。」と、放置することなく、皮膚科専門医を速やかに受診することをお薦めします。

適切な初期治療を行うことで、予後の経過、熱傷痕が非常に改善されます。
尚、私のクリニックでは、やけど(熱傷)の範囲としては、1肢から2肢程度、深さは2度の程度までの治療を行ってます。
受傷後、速やかに受診いただき、概ね1週間から2週間程の通院で、処置を中心とした治療を行うことにより、色素沈着を含め傷痕は、完治しています。

皆様、くれぐれもご注意ください。

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